思春期の発来について

思春期は脳下垂体から思春期を起こす信号(精巣・卵巣を刺激するホルモン:ゴナドトロピン)が律動的に分泌され、それにより精巣・卵巣が刺激され、男児ではテストステロン、女児では主にエストラジオルが分泌されることにより発来・成熟します。身体的な変化について、男児においては「精巣容量が大きくなる」から始まり、「陰茎が大きくなる」、「陰毛が生える」、「腋毛が生える」、「ひげが生える、声変わりをする」と進んでいきます。女児においては「乳房が膨らむ」から始まり、「陰毛が生える」、「腋毛が生える」、「生理が始まる」と進んでいきます。そして性ホルモンの作用により、骨の成熟も進み身長が急激に伸びます。

以下に「思春期早発症」、「思春期遅発症」について述べます。思春期の悩みはなかなか他人に打ち明けづらく、本人が隠してしまったりして気付きにくいこともありますが、ご心配な方はなるべく早く当院を受診し、ご相談ください。

思春期早発症

思春期の発来が早すぎる病態を「思春期早発症」と言います。多くの場合が明らかな原因がない「特発性」ですが、中には脳腫瘍や精巣・卵巣腫瘍などが原因のこともあります。思春期早発症では

  • ① 低年齢で急速に体が完成(成熟)してしまうため、一時的に身長が伸びた後、小柄のままで身長が止まってしまう可能性があること
  • ② 幼い年齢で乳房が発育する、毛が生える、月経が発来するなどの症状が出現するために、本人や周囲が戸惑う心理社会的問題が起きる可能性があること
  • ③ まれではありますが、脳などに思春期を進めてしまう原因になる病変が見つかることがあること

などがあります。

思春期早発症の検査と治療

思春期早発症の身体的な基準(※参考3)ですが、男児では「9歳までに陰茎や精巣が発育する」、「10歳までに陰毛が生える」、「11歳までにひげが生えたり、声変わりをする」です。女児では「7歳6か月までに乳房が膨らみ始める」、「8歳までに陰毛や腋毛が生える」、「10歳6か月までに生理が始まる」です。

「思春期早発症」を疑う際には診察で思春期早発徴候を確認し、成長曲線を作成して思春期時期に相当する身長増進の急激なスパートがないかを確認します。思春期早発が疑わしい場合には血液検査やレントゲン検査、必要に応じてMRI検査や負荷試験などを行います。

「中枢性思春期早発症」では卵巣・精巣を刺激するホルモンであるゴナドトロピンの分泌を抑える治療(ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ製剤:GnRHアナログ)を行うことがあります。治療を行う目的は心理社会的問題と最終身長の改善であり、すべての人が治療対象になるわけではありません。GnRHアナログは毎月1回当院で注射します。GnRHアナログによる治療は性成熟が年齢相当になり、最終身長の改善がみられた時点で終了になります。治療により思春期が発来しなくなる、妊娠しにくくなるなどの副作用はありません。

思春期遅発症

思春期が15歳までに発来しない病態を「思春期遅発症」と言います。「思春期遅発症」には体質的なものと、思春期にみられる脳下垂体からのゴナドトロピンの脈動的な分泌が通常より遅いもの(体質性思春期遅発症)、そして脳下垂体や生殖器が何らかの問題で機能低下にある場合があります。
「体質性思春期遅発症」は、通常より遅い時期に自然に思春期が発来しますが、それ以外の原因では男性ホルモンあるいは女性ホルモンの補充が必要になります。男性ホルモンの補充は毎月1回当院にて注射を、女性ホルモンの補充は内服にて段階的に投与量を増やすことによって、正常に思春期が発来するようになります。思春期の発来が遅いと骨粗鬆症になったり、心理的な問題を抱えることもありますので、1人で悩まずに相談してください。

参考3

思春期早発症の身体的な基準

男児 女児
9歳未満で精巣、陰茎、陰嚢の明らかな発育 7歳6か月未満で乳房発育
10歳未満で陰毛発生 8歳未満で陰毛発生、外陰部成熟、腋毛発生
11歳未満で腋毛やひげの発生、声変わり 10歳6か月未満で初潮

※身長が-1SD以下の場合は年齢を1歳くりあげて評価する
(例)8歳6か月未満で乳房発育がないか