腎臓病

わが国では、3歳児健診や園・学校において尿検査が行われています。腎臓の病気は、初期には自覚症状などが無いことが多く、尿検査はお子さんの腎臓の病気の早期発見・早期治療に有効なことがあります。もし尿検査で異常を指摘されましたら、お早めにご相談ください。

血尿を指摘されたら

血尿には肉眼的血尿と顕微鏡的血尿があります。文字通り、肉眼で確認できる血尿と、顕微鏡で見なければ確認できない血尿のことです。肉眼的血尿は赤だけでなく、黒褐色、赤茶色、ピンクなどの色の尿が見られます。お子さんの血尿のほとんどは顕微鏡的血尿です。

血尿の原因としては、腎臓、尿管、膀胱、尿道に異常がある可能性が考えられます。そのなかで、腎臓のフィルターの役割を果たしている糸球体に炎症が起きる病気が糸球体腎炎です。慢性の糸球体腎炎は腎機能の低下を招くことがありますので注意が必要です。

顕微鏡的血尿のみであれば腎機能は悪化することはないため、経過観察をして定期的に検査を受けるようにします。検査については、当初は1か月ごと、変化がなければ3~4か月ごとに1年ほど経過観察、その後は学校の尿検査で毎年経過をみていきます。しかし蛋白尿が出現するようになった場合は治療方針を決めるために、腎臓の細胞の一部を採取して検査する腎生検が必要になります。

蛋白尿を指摘されたら

尿中に基準以上の量の蛋白が出ている状態が蛋白尿です。検尿で蛋白が検出されたとしても、心配のいらないものもあります。たとえば一過性の蛋白尿は、激しい運動や発熱、脱水などの後にみられることがあるもので、数日後に検査して陰性であれば治療の必要はありません。また起立性蛋白尿は思春期のやせ型のお子さんによくみられるもので、学校検尿で見つかる蛋白尿の多くがこの起立性蛋白尿です。

一方で安静時にも持続的に蛋白尿が認められる場合は、病的な原因が考えられます。原因となる疾患としては、糸球体腎炎やネフローゼ症候群などがあります。慢性糸球体腎炎で尿中の蛋白量が多い場合は将来的に腎機能が低下する可能性が高くなりますので、定期的に検査を行い、状態によって早期に治療を開始する必要があります。

夜尿症

夜間、寝ている間に出てしまうおしっこのことを一般的に「おねしょ」と言いますが、この「おねしょ」が5歳を超えて1週間に2〜3回以上の頻度で、少なくとも3ヶ月以上続くと「夜尿症」があるとされます。男女比は約2:1と、女児よりも男児に多くみられます。年齢で見ていくと、5歳で15~20%、7歳で10%前後、10歳で5~10%、15歳で1~2%ほどに夜尿症がみられ、成人後も約0.5%、すなわち200人に1人は夜尿症が残っていると考えられています。

基本的には、「おねしょ」の回数は成長していくにしたがって減少していきますが、小学校に入っても続いている場合には受診をお勧めします。保護者の方にとってもご心配かと思いますが、お子さん本人も自尊心が低下しやすいことがわかっています。

夜尿症の原因

夜尿症は夜間睡眠中の覚醒障害(尿意で起きないこと)が基盤にあり、さらに「多尿型」と「膀胱型」があります。多尿型では、夜間の抗利尿ホルモンの分泌不足により尿が多く作られてしまっていることが原因として考えられています。抗利尿ホルモンとは寝ている間は尿量を少なくなるように、尿を濃くするよう調節するものです。膀胱型は、膀胱に尿を溜めておく機能が未熟なことにより尿が十分に貯められないタイプです。この場合、昼間に頻尿やおもらしがみられることもあります。夜尿症には、この二つのタイプのどちらか、もしくは両方の3つのタイプに分類されます。

夜尿症の治療

夜尿症の改善には基本的なこととして、夕方以降の水分摂取を控えることが重要です。遅い夕食は夜尿症のもとになりますので、夕食は早めに摂るようにしましょう。また夕食では塩分の摂り過ぎにも注意し、汁物は避け、水分摂取はコップ半分程度に抑えます。とくに就寝前3時間の水分摂取は控えるようにし、就寝前にしっかりと排尿することを心がけましょう。冬場はからだが冷えないようにすることも大切です。「膀胱型」では、昼間に尿を貯める訓練を行います。これは、少し尿が溜まっても膀胱が耐えられるようにするもので、トイレに行きたくなってもすぐには行かず、少しがまんするようにします。

こうした生活での取り組みでも夜尿症が改善しない場合は、お薬などによる治療を検討します。多尿型では抗利尿ホルモンの薬剤が有効です。種類としてはデスモプレシンの点鼻薬と舌下錠(商品名:ミニリンメルト)があります。心臓に負担がかかる場合もありますが、医師の指示に従って使用すれば、副作用はほとんどありません。なお点鼻薬より舌下錠の方が、副作用が少ないとされています。また膀胱型には膀胱の緊張を和らげる抗コリン薬が使われることがあります。

お薬による治療以外では、膀胱型においてアラーム療法の効果が認められています。これはお子さんが8歳くらいで、本人が「おねしょ」を治したいと希望する場合に行います。下着が濡れるとアラームが鳴る機器を用い、アラームが鳴ったら起こして自分でアラームを止めさせ、まだ尿が出そうならトイレに連れて行って残りも排尿させるというものです。最低でも3か月は根気よく続ける必要があります。60〜70%で効果が確認されており、やめてからの再発は少ないとされています。家族の協力が必要であり、夜尿回数が多くて本人の理解と治療へのモチベーションが高いことが前提となります。