• 2020年7月26日
  • 2024年10月20日

新型コロナウイルスに変化

いったん収まっていた新型コロナウイルスの感染が、6月下旬から再び増加してきていますね。東京の1日の感染者数は7月9日にすでに第1波の時のピークを超えていますし、全国的にも増えつつあります。報道では連日、お決まりのように感染者数の増加が伝えられ、さらなる感染予防対策の重要性が叫ばれています。しかし、今回の感染者の増加をよく見てみると、第1波の時とは異なる点があります。一つは感染者数がどんどん増加しているのに大部分は無症状か軽症で、死亡者数の増加はごくわずかだということです。今回は若い世代の感染が多いとは言え、明らかに重症化する人の数が少ないことがわかります。それと、PCR検査件数の増加もかなり影響しています。以前は退院の基準に2回のPCR検査陰性という条件がありましたが、これがなくなったことも合わせると、検査を受けられる人数はかなり増えています。

つまり、現在の感染者数の増加は「陽性者数」の増加であって、無症状の人をたくさん拾い出しているということになります。感染者数が再び増加したにもかかわらず死亡者数がそれに伴って増加していない現象は、緩い感染対策しかおこなっていないスウェーデンでも見られています。死亡者数が少ない、つまり重症化する率が低いということは、第1波を起こしたウイルスに代わり、現在は弱毒化したウイルスが流行の原因であると考えられます。そうなると、第1波の時と同じ対応をするのではなく、方向転換する必要があるということになりますね。そもそも第1波においても多くの対策の効果は疑問視する意見も少なくなく、自然に収束したという見方もあります。今回また緊急事態宣言の発令などは決してすべきではないと思いますし、指定感染症という扱いについてもそろそろ変更を検討すべきじゃないかと思います。すなわち、指定感染症から段階的に外してインフルエンザに近い扱いとし、一部の重症化した患者さんは感染対策が整備された病院(そこへは十分な医療物資の供給やスタッフへの支援をおこなう)で治療するようにすれば、一般病院でのコロナ以外の診療の妨げもかなり軽減されます。
また、指定感染症になっているために、感染者が出るとまるで犯人探しのような騒ぎになり、多くの人はコロナに感染するよりも周囲から受ける冷たい視線や風評被害の方が怖いと思っているのではないでしょうか。2009年に流行した新型インフルエンザの時も流行の初期に感染した生徒の在籍する学校へ嫌がらせが相次ぎましたが、今回もやはり同じようなことが起こっています。新型コロナウイルス感染症はいつ誰がかかってもおかしくない病気であり、かかった人が悪いのではなく、かかって当たり前なんです!そして、そのことをもっと政府は言うべきだと思います。

それとPCR検査ですが、無症状の人にどんどん検査をすべきだという意見が少なからずあり、実際にすでにおこなわれているところもありますが、これは間違いだと思います。PCR検査の感度は検査するタイミングや技術に左右され、感染者のうち陽性と判定されるのはせいぜい70%とされています。ということは、コロナにかかっていても少なくとも3割の人は陰性と判定されることになります。しかもこれは症状のある患者に対して行なった場合のことで、無症状で感染率の低い人たちにPCR検査を積極的におこなえばどうなるか?それは少数の感染者の発見のために防護具などの貴重な物資とともに膨大な保険料と税金が費やされ、本当は感染しているのに陰性と判定された人が安心して人に感染させるかもしれません。逆に、本当は感染していないのに陽性と判定されて隔離させられる人(偽陽性)も出てきます。検査は新型コロナウイルス感染症が疑われる患者さんやクラスター感染を起こした施設等に集中的におこなうべきで、無症状の人に一律におこなうべきものではないと思います。

日本で新型コロナウイルス感染症が本格的に流行し始めて4ヶ月が経過しましたが、状況は変わりつつあります。ウイルスは増え続けるために弱毒化して感染力を高めようとしますが、すでにその段階に入ってきたようです。とは言ってもまだふつうの風邪になったというわけではなく、時には重症化する可能性があるので注意は必要です。単に感染者数(陽性者数)だけで一喜一憂するのではなく、変化する状況を的確に判断し、適切な対応へと軌道修正していって欲しいと思います。

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