• 2019年11月5日
  • 2024年10月20日

ワクチンについて

ようやく秋らしい気候になりましたが、とたんに朝晩が冷えてきましたね。私も先日うたた寝をして、不覚にも風邪をひきました。皆さんもどうぞお気をつけください。

ところで、感染症が流行するようになった大きな要因は、人が集団で生活するようになったことと移動範囲の拡大なんですね。少人数でお互いに離れて生活していた時代は、感染症が発生してもある小集団だけでとどまり、大きな流行にはならなリにくかったでしょう。特にウイルスや細菌に免疫がない乳幼児は、保育園などに入園するとしばらくは風邪などよくもらってこられますよね。幼児期はお互いの距離も近く、感染予防対策の実践も困難な面が少なくないため、感染症の流行を防ぐことには限界があります。

感染症の予防対策としてもっとも有効なものはワクチンです。もともとワクチンは怖い感染症から集団を守るために始まりましたが、ワクチンの普及によって感染症が減ってきて、副反応がしばしば大きく問題にされるようになりました。ワクチンに反対する人たちはワクチンを接種した場合と何もしない場合とを比べて、接種した場合のワクチンの副反応の怖さを強調します。しかし、ワクチンの恩恵やワクチンを接種しなかった場合にその病気にかかった時の合併症のリスクなどには触れないか正しく伝えません。つまり、反対するのに都合の良い事柄だけを示して、ワクチンに対する不安を煽り、受けることを躊躇させたり受けないほうへ導こうとします。

近年、ヨーロッパでは麻疹ワクチンを受けない人が増えたために麻疹(はしか)の流行がみられ、ドイツでは今年の7月に麻疹の予防接種をさせなかった親に日本円で最高約29万円の罰金を課すことを閣議決定したという記事が新聞に載っていました。最近、麻疹にかかるとそれまでに獲得した免疫をリセットさせてしまうことがわかり、麻疹を予防することの重要性が再確認されています。麻疹に限らず、ワクチンの普及によって私たち恐ろしい感染症の脅威から守られていることを忘れてはなりません。

また、日本ではHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、現在も積極的勧奨が見合わせになったままになっています。毎年3,000人くらいの女性が子宮頸がんによって命を奪われているという現実があるのにもかかわらず、根拠のない非科学的なワクチンの副反応を主張する声に対し、国はしっかりした政策を打ち出せずにいます。低い接種率が続くことにより子宮頸がんの患者さんが増え続けることが強く危惧されており、当院でも昨年から対象年齢のお子さんに対して接種を勧めており、少しずつですが接種される方が増えてきています。HPVワクチンは現在も定期接種です。お子さんの将来のために、今後さらにこのワクチンの接種を強くお勧めしていきます。

予防接種で防げる病気は限られていますが、ワクチンによってこれらの病気からお子さんを守ってあげることは、お子さんへのとても素晴らしいプレゼントです。
ワクチンに限らず、世の中には医療に関する不確かな情報が散乱しています。病気や健康に関することで疑問に思われたり、不安を持たれたような場合には、お気軽にご相談ください。

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